EV充電④ 災害時や移動充電に活用できる「発電機でEV充電」という選択肢
- 知識

災害時や移動充電に活用できる「発電機でEV充電」という選択肢
電気自動車(EV)の普及に伴い、充電インフラの整備が急務となっています。
ところが、地震や台風などの災害時、または電源設備のない僻地では、充電スタンドを利用できないケースも。
こうした状況で注目されるのが「発電機でEVを充電する」という方法です。本コラムでは、 その活用シーンやメリット・デメリットを改めて解説します。
1. 災害時のEV充電問題
大規模災害が起きると、停電でガソリンスタンドも動かなくなる可能性があり、 ガソリン車・EVともに燃料(電力)不足に陥るリスクがあります。
非常用発電機や可搬型発電機を備えておくことで、 緊急時に少しでも移動可能な分の電力を充電できるのは大きなメリットです。
2. 移動充電サービスとしての可能性
- ロードサービスの拡充:ガソリン車が燃料を運んでもらうのに対し、EVは「電力を運ぶ」発想が注目
- イベント・出張サービス:アウトドアイベントや遠隔地での充電サポート需要
- 商機の拡大:カーシェア事業者や保険会社が積極的に導入を検討中
海外ではトラックに大型発電機を搭載してEVを充電する事例がすでにあり、 日本でも同様のビジネスモデルが期待されています。
3. 技術的なハードルと安全性
- 電圧・周波数の安定化:インバーター式発電機などで安定的に出力できるか
- 充電規格への対応:EV側が想定する電圧・電流に合致しているか
- 燃料管理・排気ガス:ディーゼルやガソリン発電機使用時の排ガス規制や保管許可
- 接続方法の安全性:アースや過負荷保護装置などが不十分だと事故につながる
4. どの程度の充電が可能か
EVのバッテリー容量は一般的に30〜90kWh。
小型の発電機ではフル充電に長い時間がかかるため、 必要最低限の電力を補う形が現実的です。
例:出力3kVAの発電機で2kW相当の充電を行う場合、 2時間運転しても充電できるのは4kWh程度。 航続距離にすると20〜30km程度の走行分に相当します。
5. 大型移動式発電機(~1100kVA)の活用例
小型発電機では時間を要するEV充電ですが、100kVA~1100kVAクラスの移動式発電機であれば、 より大きな電力を短時間で供給できる利点があります。
例えば、デンヨーDCAシリーズのように波形品質(インバータ制御や高精度AVRなど)が 良好な機種なら、EVのオンボード充電器が求める安定した交流を出力可能です。
- 災害時の大規模支援:複数のEVに同時充電ができるほどの容量
- イベントや祭事での充電ステーション:野外会場でのEVサポート
- ロードサービス:トラックに大型発電機を搭載し、数十kWh単位での充電提供
ただし、燃料コスト・運搬スペース・法令対応(工事計画届や危険物取扱)など、 大出力ならではの課題もあるため、運用には入念な計画が必要です。
6. 将来展望とまとめ
EV市場の拡大に伴い、非常用電源としての発電機+EVの組み合わせは 今後ますます注目されるでしょう。特に災害時や遠隔地では、 充電インフラの代替手段として期待が高まります。
とはいえ、燃料確保や充電速度、安全基準への適合など課題も多く、 現時点では補助的な手段としての位置づけに留まるのが実情です。
今後の技術進歩や法整備によって、 「いつでもどこでもEVが充電できる」環境に一歩近づくことを期待しましょう。