建築基準法 その1 設置してからでは遅い?発電機と建築基準法の落とし穴!
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設置してからでは遅い?発電機と建築基準法の落とし穴
発電機の導入を検討する際、多くの方が「消防法」や「騒音規制」に目を向けますが、意外と見落とされがちなのが建築基準法です。特に、屋内・地下・屋上などの設置には、構造・防火・換気・振動対策など多くの法的条件が関わってきます。
今回は、設置後に「しまった…!」とならないために、事前に押さえておきたい建築基準法に関する“落とし穴”を解説します。
1 落とし穴|メンテナンススペースの確保不足
建築基準法施行令129条の15および国交省告示1388号では、設備機器が「保守点検上支障のない構造」であることを求めています。発電機は重量機器であり、点検扉・燃料系・排気ダクト・冷却ファンなどへのアクセスが必要です。
設置後に「扉が開かない」「配線が密集していて点検できない」といったケースは非常に多く、機器交換時の搬出入経路も含めて計画する必要があります。
2 落とし穴|排気経路が建物基準と衝突
発電機の排気ガスは高温かつ有害物質を含むため、建物の吸気口や開口部から十分な離隔距離をとる必要があります。国交省『建築設備設計・施工上の運用指針』では、排気口が他の開口部に向く場合でも水平または上方へ3 m以上離隔する目安を示しています。
3 落とし穴|床荷重・振動が構造安全性に影響
建築基準法における構造安全性の観点からは、発電機の重量と振動がポイントになります。とくに高出力(100 kVA以上)や燃料タンク一体型の機種では、設置面の床荷重制限(kg/m²)を超えることがあります。
また、防振材が適切でなかったり、機械室が梁の上にある場合、振動が構造に伝わりクラックや共振の原因になることもあります。
4 落とし穴|防火区画と発電機が干渉する
建築基準法施行令112条の2〜で定める防火区画により、発電機室の壁・扉・配線貫通部に「耐火性能」が求められるケースがあります。隣室との間に30分以上の耐火性能が必要な場合、防火扉や耐火ケーブル貫通処理が必須で、怠ると検査NG→再施工のリスクがあります。
5 落とし穴|換気量不足による燃焼不良や熱害
発電機のエンジンは燃焼のために大量の空気を必要とします。また、運転中は大きな排熱が発生するため、機械室内の換気不足は燃焼不良・高温トラブル・制御装置の誤作動などに直結します。
建築基準法に直接の数値基準はありませんが、運用指針では例として燃焼用吸気 0.1–0.3 m³/min·kW、冷却用換気 4.8–7.2 m³/min·kWなどが挙げられています。
まとめ|設置計画の初期段階で法令チェックを
発電機の設置は、単なる「置くだけ」でなく、建物の法的・構造的条件と密接に関係します。設置後の手直しや再施工はコスト・スケジュールの大きな負担になります。
設計段階から建築基準法に精通した設備業者・施工管理者と連携し、計画・確認・申請の各段階で法令と技術基準をクリアにすることが、スムーズな導入の鍵です。