2025.04.14

建築基準法 その2 非常用発電機を設置する際に必要な建築基準法の基礎知識【技術解説版】

最終更新日:2025.07.04
  • 知識
  • 法律
建築基準法 その2 非常用発電機を設置する際に必要な建築基準法の基礎知識【技術解説版】

非常用発電機を設置する際に必要な建築基準法の基礎知識【技術解説版】

(本記事は 2025年8月30日 時点の情報をもとに作成しています)

非常用発電機は、災害時にビル・病院・工場などの重要設備をバックアップするために不可欠な設備です。
その設置においては、建築基準法、消防法、電気事業法などの法令が複雑に絡み合います。
本稿では、特に建築基準法の観点から、発電機設置時に押さえるべき構造・区画・設備基準について技術的に詳しく解説します。

1. 建築基準法が関連する主な条文と観点

  • 法第20条(構造耐力):重量物設置による構造安全性の確保
  • 法第35条(特殊建築物等):避難・消火・排煙・非常用照明等の設備を政令基準に適合させる義務
  • 法第36条:建築設備・採光・防火に関する技術基準の包括規定
  • 施行令第112条(防火区画):面積区画・竪穴区画・高層区画・外壁スパンドレル(令112条16項)等の規定
  • 施行令第129条の2の4建築設備(昇降機を除く)の構造耐力上安全な構造方法機器の緊結・アンカーボルト固定等)。
    └ 国交省告示第1388号「建築設備の構造耐力上安全な構造方法を定める件」で具体基準を提示
  • (参考)施行令第129条の3以降:昇降機等の個別設備基準

2. 構造安全性と荷重計画(屋内・屋上設置)

非常用発電機は 1 台あたり1〜3 t 超になる例が多く、スラブの許容積載荷重・局部荷重(点荷重)への配慮が必須です。
屋上設置では、架台の剛性と固有振動数、支持スパン、スラブ補強、配管・排気の荷重も含めて構造設計者と協議します。

3. 振動・騒音対策と防振構造

  • 一次防振:エンジン直下に防振ゴムやスプリング
  • 二次防振:架台と建物構造の間に防振材を追加
  • 架台設計:架台固有振動数と床スラブの固有振動数の離隔(共振回避)
  • 耐震固定:施行令129条の2の4および国交省告示1388号に適合する緊結(アンカーボルト、支持鋼材等)

4. 換気・排気の設計基準

燃焼エンジンを使用する非常用発電機では、吸気・排気量と室内温度上昇の抑制が重要です。

  • 燃焼用空気量(概算):0.09 m³/min・kW(4 Nm³/PS・h の経験値に基づく概算)
  • 冷却用換気量(概算):0.5〜0.6 m³/min・kW(25 Nm³/PS・h、室温上昇10℃程度の想定)
  • 合計目安:0.6〜0.7 m³/min・kW(設置条件・ΔTにより調整)
  • 排気温度(代表値):350〜450℃(機種により〜600℃超の場合あり)
  • 排気の配置:開口部や避難経路への巻き込みを避け、偏向板・フード等で拡散。屋外設置時は建築物の開口部から概ね3 m以上の離隔、又は不燃外壁+開口部無し等の遮蔽を目安(各自治体の火災予防条例例・運用に従う)。

※上記換気量は公的指針の式・実績値からの概算です。最終値はメーカー仕様・機関放熱量・許容温度上昇(ΔT)・ダクト圧損計算で決定してください。

5. メンテナンス空間と搬出入ルート

  • 周囲クリアランス:前面 800 mm 以上、側面 500〜600 mm 程度を目安(機種別取説に従う)
  • 天井高さ:吊上・機器更新に十分な余裕(例:2.5 m 以上)
  • 搬出入:扉幅 900 mm 以上を目安。重量搬送経路と床荷重を事前検討
  • 定期点検:消防法に基づき、6 か月ごとの機器点検と年次総合点検(内部観察等換気機能の点検は無負荷運転で実施

6. 防火区画との関係と防火措置

  • 防火区画:令112条に基づく面積区画・竪穴区画・高層区画の要求に適合
  • 区画貫通部:ケーブル・配管は認定シーリング材等で防火措置
  • 耐火構造(壁・天井・扉):仕様規定は告示1399号等の告示表、又は大臣認定に適合。RCの厚さ等の具体数値は告示表・認定仕様に従い設計者が確定
  • 消防法との整合:建築確認図書・防災設備図との整合性を確保

まとめ|法令遵守と技術的整合が設備稼働の要

非常用発電機の設置は、構造設計・建築設備・防火計画と密接に関係し、建築基準法の正確な理解と反映が不可欠です。
施工前の計画段階で、建築士・構造設計者・設備設計者・施工管理者が連携し、設置条件と法的要件の整合性をとることで、安全・確実・長寿命な設備導入が可能となります。

参考資料・公式リンク

  • e-Gov法令検索「建築基準法」:リンク
  • e-Gov法令検索「建築基準法施行令(防火区画ほか)」:リンク
  • 国交省 告示第1388号「建築設備の構造耐力上安全な構造方法」:PDF
  • 国交省 告示第1399号「耐火構造の構造方法を定める件」:PDF
  • MLIT「災害に備えるにあたっての関係法令等の解説(防火区画の要点)」:PDF
  • MAFF「電気設備工事共通仕様書(非常用発電装置:換気量の算定式・経験値)」:PDF
  • YANMAR(常用・コージェネ総合カタログ:排気温度の代表値):PDF
  • 日本内燃力発電設備協会(NEGA)「火災予防条例(例)と発電設備の位置・管理」:PDF
  • 東京都 都市整備局「建築設備・昇降機等の初回報告(検査済証翌日から2年以内)」:リンク
  • 消防庁 次長通知(消防予第372号・2018/6/1)「自家発電設備の点検(内部観察等・換気機能の無負荷点検 等)」:PDF
  • 消防庁「自家発電設備の点検に関する告示・通知(総覧)」:リンク

⚠️ 法令・通達は改正される場合があります。最新情報は必ず所轄官庁の公表資料をご確認ください。


\ 発電機.jpからのおしらせ/
発電機レンタル・購入は 発電機.jp におまかせ!

国内トップクラス 2,800台超 の在庫から、
現場にピッタリの機種をスピード手配します。

便利な無料ツールもご用意しています。お気軽にご利用ください!

📞 直接のお問合せはこちら

新日本建販㈱  ☎ 0545-53-3100(全国対応)
担当:漆畑(ウルシバタ)
urushibata@njm.co.jp