2025.04.14
建築基準法 その2 非常用発電機を設置する際に必要な建築基準法の基礎知識【技術解説版】
最終更新日:2025.04.14
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非常用発電機を設置する際に必要な建築基準法の基礎知識【技術解説版】
非常用発電機は、災害時にビル・病院・工場などの重要設備をバックアップするために不可欠な設備です。
その設置においては、建築基準法、消防法、電気事業法などの法令が複雑に絡み合います。
本稿では、特に建築基準法の観点から、発電機設置時に押さえるべき構造・区画・設備基準について技術的に詳しく解説します。
1. 建築基準法が関連する主な条文と観点
- 第20条(構造耐力):重量物設置による構造安全性の確保
- 第35条(建築設備):設備機器の適正設置
- 第62条(防火区画):火災時の延焼防止
- 施行令第112条:耐火構造および防火設備の細目
- 施行令第129条の2:機械設備設置に関する技術基準
2. 構造安全性と設置床荷重
非常用発電機は1台あたり1t〜3t以上の重量があるため、設置場所の床は十分な積載荷重(例:500〜1000kg/m²)を満たしている必要があります。
屋上設置では構造計算書と照らし合わせ、架台や基礎が局部的荷重に耐えられる設計が求められます。
3. 振動・騒音対策と防振構造
発電機は稼働時に回転振動を生じるため、建築構造への伝播を防ぐために次のような対策が必要です:
- 一次防振:エンジン直下に防振ゴムやスプリング
- 二次防振:架台と建物構造の間に防振材を追加
- 架台設計:振動共振周波数を避けた寸法・剛性の確保
4. 換気・排気の設計基準
燃焼エンジンを使用する非常用発電機では、吸気・排気量の設計が重要です。
- 必要吸気量:エンジン燃焼用+冷却用(例:1m³/分/kW 以上)
- 排気温度:400〜600℃ → 耐熱・断熱ダクトが必要
- 排気位置:建物開口部や避難経路から3m以上離隔推奨
- 風下への巻き込み:防風板・偏向板・風洞解析などで設計
5. メンテナンス空間と搬出入ルート
発電機設置には、点検・修理・機器交換が可能な空間を確保する必要があります。
- 周囲600mm以上(メーカー推奨:前面800mm、側面500mm以上)
- 天井高さ:搬出・吊り上げに十分な余裕(例:2.5m以上)
- 搬出入ルート:扉幅900mm以上、階段やリフトも確認
6. 防火区画との関係と防火措置
発電機室が防火区画に該当する場合、以下のような耐火措置が求められます:
- 壁・天井:耐火構造(例:RC壁100mm以上、防火被覆)
- 出入口:防火扉(自閉装置付)、火災時に自動閉鎖されるシャッター
- ケーブル・配管:防火区画貫通部に認定シーリング材で防火措置
これらは消防法とも重複するため、建築確認申請時の図面と整合性を取ることが重要です。
まとめ|法令遵守と技術的整合が設備稼働の要
非常用発電機の設置は、構造設計・建築設備・防火計画と密接に関係し、建築基準法の正確な理解と反映が不可欠です。
施工前の計画段階で、建築士・構造設計者・設備設計者・施工管理者が連携し、設置条件と法的要件の整合性をとることで、安全・確実・長寿命な設備導入が可能となります。
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