2025.04.10

コラム②:自家発電設備の大気汚染防止法による排出規制 (排出基準の具体例)~ばい煙発生施設を中心に~

最終更新日:2025.09.19
  • 知識
  • 法律
コラム②:自家発電設備の大気汚染防止法による排出規制 (排出基準の具体例)~ばい煙発生施設を中心に~

コラム②:自家発電設備の大気汚染防止法による排出規制(その2)
~ ばい煙発生施設を中心に ~

(本稿の法令・情報は 2025年8月20日 現在)

自家発電設備は停電時のバックアップやBCP(事業継続計画)、ピークカットなど、さまざまな用途で利用されます。しかし、燃料を燃焼して動力を得る都合上、一定規模を超えると「ばい煙発生施設」に該当し、大気汚染防止法(以下「大防法」)による排出基準を遵守する必要があります。本稿では、同法における排出基準の具体例を中心に、自家発電設備がどのように規制されるのかを解説します。

1. 自家発電設備が「ばい煙発生施設」に該当する条件

大防法施行令 別表第1により、以下の燃料の燃焼能力(重油換算)を超える自家発電設備は「ばい煙発生施設」に該当します(別表:施行令)。

  • ガスタービン・ディーゼル機関:50 L/h 以上
  • ガス機関・ガソリン機関:35 L/h 以上

手続:大防法では届出(原則60日前)が基本です(設置・変更ほか)。詳細は環境省の案内「ばい煙発生施設の設置の届出」をご参照ください。
なお、自治体条例で上乗せの許可・届出が課される地域もあります(例:東京都の上乗せ基準横浜市の手続き解説)。

2. 規制される「ばい煙」の範囲

大防法の「ばい煙」は次の3区分で規制されます(定義・枠組みの概説は環境省解説)。

  • いおう酸化物(SOx)
  • ばいじん
  • 有害物質(政令で定める物質)…
    ①カドミウム及びその化合物、②塩素・塩化水素、③フッ素・フッ化水素・フッ化珪素、④鉛及びその化合物、⑤窒素酸化物(NOx)

3. いおう酸化物(SOx)の排出基準 ― K値規制

3-1. K値規制の式と考え方

SOxの許容排出量は、排出口の高さ(有効煙突高)に応じて次式で定まります:

q = K × 10-3 × He2

q:許容排出量(m3N/h)、K:地域別定数、He:補正された排出口の高さ=煙突実高+煙上昇高(出典:環境省東京都

3-2. 地域ごとのK値(一般/特別)

  • 一般排出基準:K=3.0~17.5(16段階)
  • 特別排出基準:K=1.17~2.34(汚染が著しい等の地域で新設に適用)

全国は121区域に区分され、区域番号ごとにK値が決まっています。例:
・札幌市(区域一部除く)K=4.0/東京都特別区 K=3.0(第33号)/大阪市 K=3.0(第58号)/福岡市 K=8.76(第89号)
(参考:内発協ニュース 2019年10月号

3-3. 計算手順(数値例)

  1. 区域とK値:例として「東京都特別区」を仮定し K=3.0。
  2. 有効煙突高 He:煙突実高 25 m、煙上昇高 5 m → He = 30 m。
  3. 式に代入:q = K × 10-3 × He2
    q = 3.0 × 10-3 × (30)2 = 3.0 × 10-3 × 900 = 2.7 m³N/h

※同じHeでもKが小さい区域ほど許容排出量qは小さく(=厳しく)なります。区域・K値は必ず所轄資料で確認してください。

4. ばいじんの排出基準(濃度規制)

ばいじんは排出ガス中の濃度(g/m3N)で規制され、標準酸素濃度補正の考え方が採用されています(一般式の解説:環境省)。

機関種類 標準O2濃度 (On) 一般基準 (g/m³N) 特別基準 (g/m³N)
ガスタービン 16% 0.05 0.04
ディーゼル機関 13% 0.10 0.08
ガス機関 0% 0.05 0.04
ガソリン機関 0% 0.05 0.04

※内燃機関類については当分の間、On=Os(酸素補正なし)とする運用注記があります(出典:環境省「ばいじん・NOx基準一覧」)。

4-2. 判定単位と測定頻度の整理

  • 判定単位:原則として排出口(ばい煙発生施設)ごとに、基準状態(0℃・1気圧、乾きガス)で判定します。
  • 酸素補正:一覧の標準O2(On)に基づいて補正します。内燃機関類は当分の間 On=Os(補正なし)の運用注記があります。
  • 測定頻度:施設種別・規模により施行規則・自治体要領で定められています(例:定期測定、記録・保存)。
    ※非常用施設の扱いは次章参照。

5. 窒素酸化物(NOx)の排出基準(濃度規制)

代表的な基準値(燃料の燃焼能力が該当規模を超える場合)を示します。詳細は環境省の一覧を参照してください(同一覧ページ)。

機関種類 NOx基準(ppm) 標準O2濃度 (On)
ガスタービン(50 L/h以上) 70 16%
ディーゼル機関(シリンダ内径400mm未満) 950 13%
ディーゼル機関(シリンダ内径400mm以上) 1200 13%
ガス機関(35 L/h以上) 600 0%
ガソリン機関 600 0%

※本表のOn値は基準設定時の参照値ですが、当分の間はOn=Os(酸素補正なし)の注記が付されています。

参考:酸素濃度補正式

C = (21 − On) / (21 − Os) × Cs(環境省

C:補正後濃度、On:標準酸素濃度、Os:測定時酸素濃度、Cs:測定濃度

5-3. 非常用発電設備(非常用施設)の特例

施行令別表第1の29~32項に該当する原動機のうち、専ら非常時に用いるもの(非常用施設)は、当分の間、大防法によるばい煙の排出基準の適用外定期測定も適用外扱い)とされています。適用可否は設置形態・運用実態で判断されるため、必ず所轄で確認してください。

付録:ケーススタディ(400kVA級ディーゼル想定)

参考電流(3相3線):200V時 ≒ 1,155 A、400V時 ≒ 577 A(S=√3VI より)。

  1. 対象の確認:ディーゼル機関で燃焼能力が50 L/h以上(重油換算)なら「ばい煙発生施設」。
  2. SOx(K値):区域のKと有効煙突高Heから許容排出量qを算定(例:3-3参照)。
  3. ばいじん:基準0.10 g/m³N(特別:0.08)、標準O2=13%(当分の間 On=Os)。
  4. NOx:シリンダ内径で規制が分かれる(<400mm:950 ppm、≧400mm:1200 ppm、標準O2=13%〔当分の間 On=Os〕)。
  5. 重油/熱量換算:仕様書の燃料消費や低位発熱量から重油換算・GJ/h換算を行い、閾値判定届出要否を確認。
  6. 実務:メーカー排ガスデータの標準状態・O2条件を確認、必要に応じ消音器・触媒・尿素SCR等の対策を検討。条例の上乗せや特別基準の有無は所轄に事前相談。

6. まとめと留意点

  • 燃焼能力がGT/ディーゼル50 L/h以上、ガス/ガソリン35 L/h以上なら、ばい煙発生施設として大防法の排出基準が適用。
  • SOxはK値規制(q=K×10-3×He2、ばいじん・NOxは濃度規制。地域の特別排出基準条例の上乗せに注意。
  • 内燃機関類は当分の間、酸素補正なし(On=Os)の運用注記あり(計算時に要確認)。
  • 実務は所轄への事前相談と、最新の法令・条例・運用通知の確認が安心です。

7. 注意事項

本コラムは大防法の概要解説です。実際の運用・法改正・各自治体条例により規制内容は変動し得るため、必ず最新情報を所轄行政機関にご確認ください。個別案件や不明点がある場合は、専門家にご相談ください。

参考リンク(一次情報・公的資料中心)

⚠️ 法令・通達は改正される場合があります。最新情報は必ず所轄官庁の公表資料をご確認ください。


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