2025.04.10

コラム②:自家発電設備の大気汚染防止法による排出規制 (排出基準の具体例)~ばい煙発生施設を中心に~

最終更新日:2025.04.11
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コラム②:自家発電設備の大気汚染防止法による排出規制 (排出基準の具体例)~ばい煙発生施設を中心に~

 

 

コラム:自家発電設備の大気汚染防止法による排出規制 (その2)~ばい煙発生施設を中心に~

自家発電設備は停電時のバックアップやBCP(事業継続計画)、ピークカットなど、さまざまな用途で利用されます。しかし、燃料を燃焼して動力を得る都合上、一定規模を超えると「ばい煙発生施設」に該当し、 大気汚染防止法による排出基準を遵守する必要があります。
ここでは、同法における「ばい煙の排出基準」を中心に、自家発電設備がどのように規制されるのか解説します。

1. 自家発電設備が「ばい煙発生施設」に該当する条件

大気汚染防止法において、下記の燃料の燃焼能力を超える自家発電設備は「ばい煙発生施設」として位置づけられます。

    • ガスタービン・ディーゼル機関:1時間あたり50L(重油換算)以上
    • ガス機関・ガソリン機関:1時間あたり35L(重油換算)以上

これらに該当する場合、所轄行政機関への届出や許可申請などが必要になることがあります。
また、条例や地域の運用ルールによって規制内容が変わるため、設置計画段階で必ず自治体に確認してください。

2. 規制される「ばい煙」の範囲

大気汚染防止法では、ばい煙を大きく以下の3つに区分して規制しています。

  1. いおう酸化物(SOx)
  2. ばいじん
  3. 有害物質(政令で定める窒素酸化物等:NOxなど)

自家発電設備がばい煙発生施設に該当する場合、上記物質の排出基準を守る義務が生じます。

3. いおう酸化物(SOx)の排出基準

3-1. K値規制とは?

いおう酸化物(SOx)は、「q = K×10-3 × He2という式で排出量を算定する K値規制方式を採用しています。

  • q:いおう酸化物の量(0℃・1気圧換算 ㎥/時)
  • K:地域ごとに定められた係数
  • He:排出口の高さ(煙突実高+煙上昇高)

3-2. 地域によって異なるK値

日本全国は121の区域に分割され、区域ごとに「第○号」と番号が振られています。地域ごとに K値(3.0~17.5の16段階)が異なり、 K値が小さいほど規制が厳しいという特徴があります。

例として、以下のようなK値が設定されています。

  • 札幌市(一部除く):第1号 → K = 4.0
  • 東京都特別区:第33号 → K = 3.0
  • 大阪市:第58号 → K = 3.0
  • 福岡市:第89号 → K = 8.76

よって、煙突の高さが同じでも、K値の小さい地域では許容されるSOx排出量がより厳しく設定されることになります。

4. ばいじんの排出基準

ばいじんは「濃度(g/m³)」で規制され、温度0℃・圧力1気圧に換算した排出ガス1m³あたりに含まれるばいじん量が、下記の基準を超えないようにしなければなりません。

ばいじんの排出基準(一例)
機関種類 排出基準 (g/m³)
ガスタービン・ガス機関・ガソリン機関 0.05
ディーゼル機関 0.10

また、全国9地域の「施設集合地域」などでは、 特別排出基準が適用され、さらに厳しい値(0.04g/m³や0.08g/m³など)が設定されることもあります。

5. 有害物質(NOx)の排出基準

窒素酸化物(NOx)も同様に「濃度(㎤/m³)」で規制されます。 代表的な例を下表に示します(燃料の燃焼能力が規定を超える場合)。

窒素酸化物(NOx)の排出基準(一例)
機関種類 NOx排出基準 (㎤/m³) 標準酸素濃度 (On)
ガスタービン(50L/h以上) 70 16%
ディーゼル機関(シリンダー内径400mm未満) 950 13%
ディーゼル機関(シリンダー内径400mm以上) 1200 13%
ガス機関(35L/h以上) 600 0%
ガソリン機関 600 0%

実際の規制値は、標準酸素濃度 (On)で排ガス中の酸素濃度を補正して算定します。機関の種類によって規制が大きく異なるため、 導入前後に必ず所轄行政機関に確認しましょう。

6. まとめと留意点

  1. ばい煙発生施設の基準確認:燃料消費量が一定以上の場合、大気汚染防止法の適用を受ける。
  2. 3種類(SOx・ばいじん・NOx)の規制:それぞれ規制の形(K値、濃度)が異なるため要注意。
  3. 地域によるK値と特別排出基準:地域の区分・施設集合地域などで規制値が異なる。
  4. 行政機関への事前確認:最新の条例や運用ルールを確認し、必要な届出・測定を実施。

自家発電設備は、いざというときのバックアップとして非常に有用です。一方で、排気ガスによる大気汚染リスクもゼロではありません。
最新の法令を遵守し、必要に応じて専門家の助言を得つつ、持続可能な形で自家発電を活用しましょう。

7. 注意事項

本コラムは、日本の刑法や労働基準法をはじめ関連する法令を遵守した形で作成したものです。
ただし、各地方自治体の条例や法改正などにより、適用される規制値や必要手続きは変わる可能性があります。
実際の運用や個別事例については、必ず所轄行政機関へ直接確認し、わからないことは専門家の意見もあわせてご検討ください。

7. 便利なツール・発電機サイト

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