2025.04.09

コラム①:自家発電設備の環境規制(基本解説)~ 大気汚染防止法の基礎とばい煙発生施設の概要 ~

最終更新日:2025.04.11
  • 知識
  • 法律
コラム①:自家発電設備の環境規制(基本解説)~ 大気汚染防止法の基礎とばい煙発生施設の概要 ~

 

 

コラム①:自家発電設備の環境規制(その1)
~ 大気汚染防止法の基礎とばい煙発生施設の概要 ~

1. はじめに

自家発電設備は非常用電源やピークカットなどで利用されますが、環境規制への対応も重要です。
大気汚染防止法は、大気汚染の原因となる「ばい煙」の排出規制を通じて、環境保全を図る法律です。
本コラムでは、大気汚染防止法における「ばい煙」や「ばい煙発生施設」など、基本的なポイントをご紹介します。

2. 大気汚染防止法で規制される「ばい煙」とは

大気汚染防止法第2条第1項により、以下の物質が「ばい煙」として規制の対象になります:

  1. 硫黄酸化物(SOx)
  2. ばいじん(スス)
  3. 有害物質(政令で定める窒素酸化物等:NOxなど)

これらの物質を多量に排出する施設に対しては、環境基準を維持するために一定の排出基準が適用されます。

3. ばい煙発生施設とは

大気汚染防止法第2条第2項では、ばい煙発生施設を
「工場又は事業場に設置される施設でばい煙を発生し、及び排出するもののうち、 その施設から排出されるばい煙が大気汚染の原因となるもので政令で定めるもの」
と定義しています。

具体的には、大気汚染防止法施行令 別表第1で定められた、 施設の種類・規模(全32種類)が該当します。

固定発生源(工場や事業場に固定して設置されるもの)と、 移動発生源(自動車や移動用発電設備など)に分かれますが、 自家発電設備は前者の固定発生源として扱われます。 (移動用発電設備は別の制度で規制)

4. 自家発電設備も「ばい煙発生施設」になる?

大気汚染防止法施行令 別表第1では、発電設備のうち以下の機関が「ばい煙発生施設」に該当します。

発電設備に関係するばい煙発生施設
No. 対象となる施設 適用規模(重油換算 L/h)
29 ガスタービン 50L/h 以上
30 ディーゼル機関 50L/h 以上
31 ガス機関 35L/h 以上
32 ガソリン機関 35L/h 以上

つまり、一定規模以上の自家発電設備はばい煙発生施設として、 大気汚染防止法の排出規制を受けることになります。

5. ばい煙発生施設としての主な義務

  1. 排出基準の遵守
    硫黄酸化物(SOx)、ばいじん、窒素酸化物(NOx)の排出量や濃度が、 法律・省令で定める基準を超えないようにする必要があります。
  2. 設置・構造変更時の届出
    ばい煙発生施設を新たに設置、または構造を変更する場合は、 所轄行政機関(都道府県知事等)への事前届出が必要です。
    自家発電設備の場合、「電気事業法」に基づく工事計画届出(産業保安監督部)で 兼ねるケースもあります。
  3. ばい煙量や濃度の測定・記録
    運転時におけるばい煙の排出状況を測定・記録し、 その結果を3年間保存する義務があります。
    違反時には改善命令や一時使用停止命令を受ける場合もあります。

6. まとめ

大気汚染防止法では、「ばい煙発生施設」から排出される硫黄酸化物、ばいじん、窒素酸化物などを規制対象とし、 違反時には改善命令や一時停止命令が出されることがあります。
自家発電設備も、一定規模(ガスタービン・ディーゼル機関は 50L/h 以上、 ガス機関・ガソリン機関は 35L/h 以上)に達するものはばい煙発生施設に該当する点に注意しましょう。

次回のコラム(その2)では、具体的な排出基準のしくみ(K値規制、ばいじんやNOxの濃度規制)などを 詳しく解説します。

7. 注意事項

本コラムは、「大気汚染防止法」を中心に解説しています。
実際の運用や法改正、各地方自治体の条例等により規制内容は変動し得るため、 必ず最新情報を行政機関へ直接確認してください。
また、日本の刑法や労働基準法の規定も遵守した上で作成していますが、 個別事例や不明点がある場合は専門家へご相談ください。

7. 便利なツール・発電機サイト

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