2025.05.26
非常用発電機レンタルと停電信号の連携【専門解説】
最終更新日:2025.05.26
- 知識

最終更新日:2025.05.26
非常用発電機レンタルと停電信号の連携【専門解説】
非常用発電機をレンタル導入する場合、自動始動盤と既設設備の停電信号の連携はきわめて重要です。商用電源が停止した際に発電機を自動起動し、負荷へ確実に電力を供給するための仕組みを、電気的仕様・結線方法・動作原理の観点から詳しく解説します。
停電信号の種類と動作原理
停電信号とは、既設電源監視装置や制御盤が商用電源の停電を検出した際に出力する信号を指します。多くのケースで無電圧 a 接点(ドライ接点)または有電圧信号(DC24 V/AC100 V など)が採用されます。自動始動盤はこの信号をトリガーにエンジン始動指令を出し、停電解消後には停止指令へ移行します。
無電圧 a 接点による一般的な結線方法
- 既設の停電検出装置からドライ接点信号を取り出す。
- レンタル発電機の自動始動盤にある
REMOTE START
/AUTO START
端子へ配線。 - 停電時に a 接点がクローズし、自動始動盤がスタータリレーを駆動してエンジンを始動。
代表的仕様値
項目 | 代表値 | 注記 |
---|---|---|
接点容量 | DC 30 V 1 A(抵抗負荷) | リレー駆動用 |
最小適用電圧/電流 | DC 5 V/10 mA | 微小電流領域での確実動作 |
短絡持続時間 | 100 – 200 ms | 始動判定に必要な保持時間(機種により推奨値が異なる) |
信号線長とノイズ対策
- 50 m 以上: シールド付きツイストペア 0.75 mm² (STP) を推奨。
- シールド編組は電源側片端接地とし、誘導ノイズを低減。
- 必要に応じ中継箱で補助リレーを挿入し、電圧降下を補償。
有電圧信号の場合のインターフェース
自動始動盤の入力が無電圧接点限定の場合、有電圧信号を補助リレーで無電圧化します。たとえば AC100 V 信号を小型補助リレーに印加し、そのドライ接点を自動始動盤に入力します。

※コイルにはサージ吸収用の CR/ダイオードを必ず挿入し、接点溶着やノイズ侵入を防止してください。
既設 ATS との組み合わせ
既設 ATS が商用/非常用電源の切替えと停電検出を兼ねている場合、ATS の a 接点(発電機始動信号)をレンタル用自動始動盤へ引き込みます。
- ATS メーカー設定で「発電機あり」モードか「テスト」モードを選択。
- 接点定格(AC 250 V 5 A など)を確認し、重複配線を避ける。どうしても並列接続する場合は、絶縁バリアや二重リレーで確実に絶縁を確保する。
安全性・保護回路の留意点
- 逆潮流防止: 逆電力継電器 (設定値: 逆電流 1–5 %In, 時間 0.5 s/一次側 CT 200/5 A 例) または MCCB インターロック。
- 過負荷保護: 定格の 80 %以内で設計し、ロードバンク試験で確認。
- 緊急停止: E‑STOP ボタンは赤色/黄色地で表示し、操作高さ 0.8–1.1 m*1。
*1 JIS B 9700:2022 推奨範囲は 0.6–1.5 m。作業性を考慮し中心値を採用。
レンタル利用時の事前打合せ事項
- 停電信号の出力仕様(無電圧/有電圧、電圧値、N.O/N.Cの極性)。
- 単線結線図・系統図の事前共有。
- ケーブル長・経路設計(ノイズ対策・電圧降下)。
- 現地作業スケジュール(配線工事・試運転)。
事前試験・デモ運転の重要性
システムトラブルの多くは、実負荷試験でのみ発覚します。本稼働前にロードバンクや実負荷を用いて 起動 → 切替 → 負荷投入 → 停止 の一連動作を必ずシミュレーションしましょう。
- エンジン始動から定格電圧・周波数安定までの時間を測定。
- UPS 併用の場合、同期許容時間を確認。
まとめ:連携を円滑に進める鍵
- 停電信号の仕様と自動始動盤の入力形式をマッチング。
- 既設 ATS の制御ロジック・定格を確認。
- 負荷容量・配線長・保護回路を正確に把握。
- 試運転で起動〜切替〜停止を検証する。
これらを徹底することで、停電時にも確実に非常用電源を確保し、施設の稼働継続性を高められます。
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