2025.07.02
非常用発電機|必ず守りたい法令と点検・設置・施工ポイント【現場レポート】 教えて発電くん!
最終更新日:2025.08.25
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非常用発電機|必ず守りたい法令と点検・設置・施工ポイント 教えて発電くん
※本稿の法令・情報は 2025年8月25日 時点の公表資料に基づきます。
エピソード:ビル管理会社からのご相談
「非常用発電機を新しく設置するのですが、法律で決められているポイントは?
定期点検のルールも知りたいです!」――こんなご相談が増えています。この記事では専門用語をかみ砕いて、最低限ここだけは!という要点をまとめました。
非常用発電機に関わる主な法令・基準
- 建築基準法・同施行令
– 施行令126条の4(非常用照明〈設置〉)・126条の5(構造)で非常用照明を義務化。
– 非常用照明の電源性能(停電後の自動点灯、所要保持時間など)は昭和45年建設省告示第1830号で補完(蓄電池または自家発電機)。
– 非常用昇降機(非常用エレベーター)は施行令129条の13の3 第1項第10号で非常用の電源を要求。種類(発電機/蓄電池等)は条文で特定しないため、自治体要領・設計協議で条件が付くことがあります。
– 自家発電を採る場合の排気・耐震・防火区画等は、国交省等の「建築設備の指針」や関連告示・技術資料で補完。 - 消防法・消防法施行規則
– 昭和48年消防庁告示第1号(自家発電設備の基準)で構造・性能・点検方法を規定。
– 点検周期:機器点検=6か月ごと、総合点検=年1回。
– 運転性能確認(負荷運転/内部観察等):通常は年1回(総合点検時)に実施。2018年改正で、内部観察+予防保全を満たす場合に限り最長6年までの運用が認められます(所轄の運用に従う)。
– 点検記録の保存義務:施行規則31条の6で3年間保存と規定(最新通知でも整理)。 - 電気設備技術基準(電気事業法)
– 絶縁抵抗の目安(解釈58条):150V以下 0.1MΩ/150–300V 0.2MΩ/300V超 0.4MΩ。
– 接地・短絡・過負荷保護は33〜45条で規定。
– 接地抵抗の管理:D種接地の一般目安は100Ω以下(条件によりC種など)。 - 労働安全衛生法・安衛則
– 整備・試験時は低圧活線・近接作業の安全措置(346〜349条)。
– 低圧活線作業を行う者は特別教育修了+有資格者(電気工事士・消防設備士 等)の関与が望ましい。
– KY(危険予知)・手順書の活用を推奨。 - 大気汚染防止法・騒音規制法
– 発電機の排ガス・騒音は現場や地域で規制値が異なります。規制地域指定や低騒音型仕様の確認を。 - ケーブル・接続部の JIS / IEC 基準
– 主幹ケーブルは用途と電圧階級で選定。例:屋内・機内配線にはJIS C 3312〈600V VCT〉、屋外仮設や重荷重用途にはJIS C 3327〈0.6/1kV 3PNCT〉。
– 国際規格では IEC 60502-1(0.6/1kV級)、可とうケーブルはIEC 60245-4(450/750V級)の適合品を目安に。
– 劣化・損傷の点検を行い、600V以下のVCTなどはPSE表示、0.6/1kVケーブルは規格適合の確認を。 - 排出ガス対策型建設機械指定制度
– 可搬式ディーゼル発電機(とくに19kW未満を含む携帯型)はオフロード法の直接規制外ですが、
国交省の「排出ガス対策型(低騒音・低振動)建設機械」の指定品を選ぶと、公共工事や自治体要件で有利になることがあります。
– 据置式非常用発電機は同制度の対象外でも、条例(例:東京都環境確保条例)で排出に関する個別要件がある場合あり。 - 消防法・危険物規制(軽油の容量区分)
– 200L以上〜1,000L未満は「少量危険物」、1,000L以上は「指定数量」。
– 防油堤容量は原則タンク容量の110%以上。ただし条例で100%とする自治体例ありのため、所轄と確認。 - BCP 関連指針(内閣府 等)
– 災害対応を想定し、72時間(3日)以上の燃料備蓄を推奨。
– 病院・データセンターなど重要施設では1週間分を設計条件とする例も。 - 廃棄物処理法・PCB 特措法
– 更新工事でPCB含有油が残る発電機やトランスを撤去する場合は、届出・適正処分が必須。
⚠️ 法令・通達は改正される場合があります。最新情報は必ず所轄官庁の公表資料をご確認ください。
定期点検チェックリスト(10+α 項目)
- 目視点検(週次目安・推奨):漏油・漏水・亀裂・腐食・異臭・異音を確認。
- バッテリー管理(月次・推奨):電圧・比重、補水、端子腐食清掃。交換目安 3–4年(鉛蓄電池の一般例。詳細はメーカー推奨値)。
- 機器点検〈消防法:6か月毎〉:絶縁抵抗・接地抵抗・始動装置・保護装置などを総合確認。
- 自動テスト運転(週次または月次・推奨)+無負荷始動:ATSで自己診断を行い、警報の作動も確認(近隣騒音に配慮)。
- 運転性能確認(年1回):負荷運転または内部観察等で性能確認。予防保全を満たす場合は最長6年の運用が可(所轄の運用に従う)。
- 燃料品質試験(推奨:半年〜年1回):サンプル採取し水分・微生物・セタン価等を確認。B5以上の混合軽油はバイオサイド添加+水抜きなど。
- 潤滑油・冷却水交換:運転100hまたは1年毎の目安/LLC濃度チェック。
- 吸気・排気系点検:フィルタ目詰まり、マフラー亀裂、火花捕集器、遮熱材の状態。
- 安全装置・ATS動作試験:過回転・高水温・低油圧・自動切替の実動確認。
- 点検記録と改善履歴の保存:測定値は電技解釈58条の基準と照合し、記録は3年間保存(施行規則31条の6)。必要に応じ所轄へ報告。
設置計画・施工のポイント(18 項目)
- 設置場所選定:浸水想定区域外(想定最大規模洪水 L2 を基準)を優先。高温・粉塵・塩害リスクから離隔。
- 防火区画・耐火性能:発電機室は有効な防火区画とし、壁・床・扉を含め所管と協議(建物用途により要件が異なる)。
- 排気・換気計画:メーカー計算書を優先し必要換気量を確保(数値例は参考値)。吸気口と排気出口は3m以上離隔が目安。
- 騒音・振動対策:防音パネル・遮音シート+防振ゴム/スプリングを併用(目標:室外 1mで75–85 dB(A)級の仕様など)。
- 燃料タンク:二重殻+漏洩検知。防油堤容量は110%以上を基本に、条例差(100%)は所轄確認。
- 耐震設計:水平加速度の想定(例:一般0.3–0.6G/重要設備は大きめ)に基づき、アンカーボルトの二重ナット・緩み止め等で固定。
- ケーブル・配管経路:防火貫通措置、電圧降下 3%以内を目安に設計。ケーブル選定ツールで容量確認。
- 点検スペース確保:周囲1m以上を空け、オイルドレン排出やフィルタ交換の動線を確保。
- 自動切替盤・遠隔監視:ATSは発電機室同室または隣接室に。制御・励磁配線はできるだけ短く(例:10m以内はメーカー推奨)。IoT監視で稼働ログを収集。
- 行政手続き:設置計画図を建築主事・消防に事前協議。完成届・危険物関連(変更許可等)も忘れずに。
- 接地・等電位ボンディング:D種接地100Ω以下(300V超はC種)。燃料タンク・配管も共通接地。
- 非常停止ボタン:出入口付近に赤色E-STOP。誰でも即操作できる位置。
- 火災探知・ガス系自動消火:CO₂・不活性ガスと煙/熱感知器、ダクト防火ダンパを併設。
- 防油堤・漏油パン:二重殻タンクでも防油堤は維持。床は不燃・導電塗装が望ましい。
- 排ガススタック高さ・背圧管理:給気口との水平3m/上方3m離隔を目安。排気背圧はメーカー上限以下。
- 雷サージ・等電位:ケーブル入口にSPD(避雷器)を設置し、全金属部を等電位で接続。
- 逆潮流防止インターロック:商用復帰時の逆潮流を防ぐ機械的・電気的インターロックを採用。
- 通信回線の冗長化:LTE+閉域網SIMや衛星回線の二重化で遠隔監視を確保。
行政手続・BCP のポイント
- 消防の届出(例:東京都):工事前=着工10日前までに計画・着工届、完成後=設置後4日以内に設置届。
※地域で様式・期日が異なるため、担当消防署の案内に従う。 - 電気事業法(自家用電気工作物):完成時に竣工届、使用前自己確認(施行規則52条)等。地域の産業保安監督部(または保安協会)に確認。
- 危険物関係:軽油タンクが「少量危険物/指定数量」に該当する場合は別途届出・許可。
- BCP(業務継続計画)連携:燃料・冷却水を重要資源と定義し、燃料の優先供給協定や運搬体制を事前に整備。
発電くんの現場アドバイス
発電くん:
「点検はチェックリストで“見逃さない”こと、
設置は“将来のメンテナンス”まで考えることがコツ!
月1回の自動テスト運転と、燃料は72時間分の備蓄を忘れずに。
困ったら専門家と一緒に現場を確認しよう。」
まとめ
非常用発電機は、命や建物を守るための“最後の砦”。
法令・点検ルールを守り、日頃から状態を管理しましょう!
最新の法改正や行政指導にも注意してください。
参考資料・根拠リンク
- 総務省消防庁:自家発電設備の点検基準(2018年見直し) / 点検記録の保存(原則3年)通知(2024)
- 東京消防庁:設置計画・着工届(着工10日前) / 設置届(完成後4日以内)
- 建築:昭和45年建設省告示第1830号(非常用照明の構造) / 建築基準法施行令(非常用照明・昇降機) / 官庁営繕の技術基準(参考)
- 電気:電気設備技術基準の解釈(絶縁抵抗) / 接地工事の区分(参考解説)
- 危険物:少量危険物Q&A(東京消防庁) / 危険物技術上の基準の細目(防油堤の容量算定) / 条例で100%に緩和の例
- 排ガス・騒音:陸内協:携帯発電機と排ガス規制の整理 / 低騒音・低振動型建設機械の指定
- JIS/IEC:JIS C 3312(VCT) / JIS C 3327(3PNCT) / IEC 60245-4(可とうケーブル) / IEC 60502-1(0.6/1kV)
- BCP:内閣府:燃料供給等の事業継続の考え方
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