教えて発電くん!:発電機のブレーカーが落ちる原因と対策(実務版)
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発電機のブレーカーが落ちる原因?|教えて発電くん!
現場で発電機のブレーカーが落ちたときに、「まず何を見るか」「何から切り分けるか」をコンパクトにまとめた実務向けガイドです。
⚡【結論】発電機のブレーカーが落ちる主な原因は6つ
可搬型・移動式発電機でブレーカーが落ちる原因は、おおよそ次の6つに整理できます。
- ① 過電流 … 容量オーバー・突入電流・長尺ケーブルによる電圧降下
- ② 漏電・地絡 … 機器やケーブルの絶縁不良・水濡れ
- ③ 短絡(ショート) … 配線ミス・ケーブル損傷
- ④ 電圧・周波数の異常 … 突入によるドロップ・エンジン不調
- ⑤ 接地方式・結線の問題 … 独立電源としての接地不備・N-PEの扱いミス
- ⑥ ブレーカー自体の劣化・故障 … 内部接点の摩耗・湿気・振動
どれに当てはまりそうかを見るために、最初に確認することは3つだけです。
🔍 まず確認するのはこの3つだけ
- どのブレーカーが落ちたか?
─ 発電機本体(MCCB)/漏電遮断器(ELCB・RCD)/負荷側ブレーカー - どの機器をつなぐと落ちるか?
─ 特定の機器だけか、全体で落ちるか - 危険な異常がないか?
─ 焦げ臭・異音・焼け跡・ケーブルの発熱・プラグ溶融があれば
すぐ停止し、再投入しない
ここまでで「どの系統」「どの負荷が怪しいか」がおおよそ見えてきます。
🧩 原因別:現場でできる対策の要点
① 過電流(MCCB/過電流保護)
- 総負荷が発電機の定格kVAを超えている。
- モーター・コンプレッサ・ポンプ・一斉点灯などの突入電流が重なっている。
- 細く長いケーブルで電圧降下 → 電流増加が起きている。
対策:
・発電機は定格の70~80%を目安に負荷計算。
・モーター負荷は一台ずつ時間差で始動させる。
・ケーブルは「太く・短く」、ドラムは必ず全て引き出す。
・足りなければ、上位容量の発電機に切り替え。
② 漏電・地絡(ELCB/RCD)
「雨上がりだけ落ちる」「この機器をつなぐときだけ落ちる」といった症状は、このパターンが多いです。
- 屋外照明・仮設盤・延長ケーブルの水濡れや絶縁劣化。
- コネクタ内部の水滴・汚れ・緑青。
- N-PEの誤結線、二重接地。
対策:
・怪しい系統を切り離して絶縁測定(500Vメガ)。基準未満は交換。
・プラグ・コネクタを乾燥させ、汚損・劣化品は交換。
・N(中性線)とPE(保護接地)の分離・結線を確認。
・屋外は防水コネクタ・防水分電盤を使用。
⚠️ 法令・通達は改正される場合があります。最新情報は必ず所轄官庁の公表資料をご確認ください。
- 労働安全衛生規則 第2編第5章: 第333条ほか(漏電遮断器の使用等)
③ 短絡(ショート)
「入れた瞬間に必ず落ちる」「何度入れても一瞬で落ちる」ならショートの可能性が高いです。
- 配線ミス・圧着不良。
- ケーブルの挟み込み・釘打ちによる心線露出。
対策:
・ブロックごとに分けて導通チェック。
・損傷ケーブルは必ず交換(テープ巻きだけで使わない)。
④ 電圧・周波数の異常
- 大きな突入で電圧が落ちて、MCCBに不足電圧トリップ(UVR)機能が付いている場合はそれが作動することがある。
- ガバナ不良・燃料系トラブルなどで周波数が下がり、機器側保護が動作。
対策:
・大きな負荷は順番を決めて段階投入。
・エンジン回転数(周波数)・フィルタ・燃料系を点検。
・必要に応じて回路分割やフェーズ分散で負荷を平準化。
⑤ 接地方式・結線の問題
- 独立電源としての接地不足(外箱・機器外箱・機能接地)。
- N-PE結合点が複数あり、RCD誤動作や感電リスクが増加。
対策:
・可搬形発電機では外箱・負荷機器外箱・機能接地を適切に施工。
・メーカーの接地方式・配線例を確認し、それに従う。
⑥ ブレーカー自体の劣化・故障
- 内部接点の摩耗・焼損。
- 屋外使用により湿気・振動で機構が不安定。
対策:
・定期点検時に作動試験を行い、使用年数が長いものは交換を検討。
・同じブレーカーだけ頻繁に落ちる場合は、負荷側と合わせて機器診断。
🏗 シーン別:現場で意識したいポイント
建設現場(屋外・湿潤)
- 雨天・雨上がりのトリップはコネクタ・仮設盤内の水分が多数。
- 延長ドラムを巻いたまま使うと、発熱・電圧降下・漏電リスクが一気に増える。
イベント電源(照明・音響)
- LED電源・調光器の高調波でRCD誤動作や過電流が起きることがある。
- 音響と照明は回路を分けるとトラブルが減りやすい。
モーター・ポンプ・コンプレッサ・溶接機
- 始動電流は定格の5~7倍が目安。必ず単独始動→安定後に次の機器とする。
- 溶接機は専用回路+太線ケーブル+発電機近接配置が基本。
- インバータ機器使用時は、メーカー推奨のRCDタイプを選定。
✅ 一枚にまとまる:簡易チェックリスト
- どのブレーカーが落ちたか確認(本体MCCB/RCD/負荷側)。
- 焦げ・異臭・発熱・水濡れ・プラグ溶融がないか確認。
- 主ブレーカーを戻し、負荷を一台ずつ入れて「落ちる機器」を特定。
- 延長や分岐を減らし、「太く短い」ケーブル構成にして再確認。
- 怪しいケーブル・機器は絶縁測定し、基準未満は交換。
- 接地とN-PE結線を確認(独立電源として適切か)。
📘 補足:最低限おさえておきたい用語
- MCCB(配線用遮断器)
- 過電流・短絡を検出して回路を遮断するブレーカー。発電機本体や分電盤のメインに使われる。
- ELCB/RCD(漏電遮断器)
- 漏電・地絡を検出して人を感電から守るブレーカー。屋外・湿潤環境では必須。
- N-PE(中性線と接地線の結合点)
- N=中性線(電流の戻り道)、PE=保護接地線(アース)。
一般に、電源系統ごとに中性線と接地線を結ぶポイントは1か所に限定するのが原則で、
可搬形発電機ではこの扱いを誤ると、保護装置の誤動作や感電の原因になる。
📎 関連法令・基準(根拠リンク)※2025年11月12日時点
- 労働安全衛生規則 第2編第5章: 漏電による感電の防止(第333条ほか)
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」: 感電(漏電遮断器の設置義務の解説)
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」:
・ 過電流遮断器の要件(第33条 等)
・ 接地抵抗 等の解釈 - JIS(参考):
・ JIS C 8201-2-2(漏電遮断器の用語・機能)
・ JIS C 8211(配線用遮断器) - メーカー技術情報(例): Denyo FAQ:可搬形発電機の接地とRCD標準
⚠️ 法令・通達は改正される場合があります。最新情報は必ず所轄官庁の公表資料をご確認ください。
📝 発電くんの現場レポート
症状:雨上がりに照明系統だけRCDが頻繁にトリップ。
切り分け:
照明をゾーン分割して確認したところ、屋外ハンガー照明の分岐で再現。
プラグ内部に水滴が残っており、延長ドラムは半分巻いたまま使用されていた。
対策:
ケーブルを乾燥・一部交換し、防水コネクタへ更新。
ドラムは必ず全量繰り出して使うルールに変更。
結果:
トリップは解消し、発電機負荷率も最大約75%に収まり安定運用が可能になった。
❓ FAQ(よくある質問)
Q1. ブレーカー容量だけ大きくすれば落ちなくなりますか?
A. ブレーカーだけ大きくすると、配線や機器の許容電流を超えてしまい非常に危険です。
発電機容量の見直しや回路分割・投入手順の整理で対応してください。
Q2. RCDが時々誤動作します。感度を鈍くしても大丈夫?
A. 感度を鈍くすると感電防止性能が下がります。
まずは漏れ電流の原因を取り除き、それでも問題がある場合は専門家に相談のうえで選定・設定を検討してください。
Q3. インバータ機器でブレーカーが落ちやすいのはなぜ?
A. 高周波成分による漏れ電流・高調波でRCDが動作したり、見かけの過電流が増えるためです。
メーカー推奨のRCDタイプ選定・ノイズ対策・回路分割などが有効です。