【教えて発電くん!】パソコンって漏電しているの?
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【教えて発電くん!】
パソコンって漏電しているの?

「パソコンって、いつも少しだけ漏電してるって聞いたけど本当?」
「発電機につなぐと、漏電ブレーカがよく落ちるのはパソコンのせい?」
こんな会話、現場で聞いたことはありませんか?
前回のトラブル事例コラム
「PC・UPS・ネットワーク機器を多数つないだら、発電機の漏電ブレーカ(30mA)が落ちた!?」
を公開したところ、
「そもそもパソコンって漏電しているの?」「危なくないの?」といったご質問を多くいただきました。
ここでは、パソコン単体の漏えい電流と安全規格の考え方を、ポイントを絞って整理します。
先に結論だけ押さえておきましょう。
- パソコンには、仕様として『ごく小さな漏えい電流』が流れる回路がある
- これは故障などによる「危険な漏電」とは別物です
現場スタッフさん:「『漏電してる』って聞くと、ちょっと怖いんだけど…」
発電くん:「大丈夫。“危ない漏電”と“規格上許容されている微小な漏えい電流”はきちんと分けて考えるのがポイントだよ!」
1.「漏電」と「漏えい電流」をざっくり整理
1-1.みんながイメージする「漏電」
- 本来は絶縁されている部分から、予想していないところへ電流が流れている
- 金属筐体などに危険な電圧が乗り、感電・火災のおそれがある
- 配線不良や絶縁劣化などの故障・事故レベルの状態
こうした危険な漏電事故を防ぐために、漏電遮断器(ELB/RCB)が設置されています。
1-2.規格でいう「漏えい電流(接触電流)」
電気安全規格では、
- 機器が正常に動いていても、ごくわずかに流れる電流を「漏えい電流」「接触電流」と定義
- 人が触れても安全な範囲になるよう上限値を決めている
情報機器(PC・サーバなど)は、主に次の安全規格で評価されています。
- 旧規格:IEC 60950-1/JIS C 6950-1 など
- 現行:IEC 62368-1/JIS C 62368-1 など
これらの規格では、クラスI機器(接地付き機器)の接触電流は概ね3.5mA以下といった限度値が示されています。
1-3.なぜパソコンには「微小な漏えい電流」があるの?
デスクトップPCやサーバの電源ユニットには、電源線からノイズを出さないためのEMIフィルタが入っています。
- コモンモードチョーク
- Xコンデンサ(L-N間)
- Yコンデンサ(L-PE間/N-PE間)
このうちYコンデンサは、電源ラインとアース(PE)の間に接続され、高周波ノイズをアースへ逃がす役割を持っています。
コンデンサである以上、50/60Hzに対してもごくわずかな電流が流れ、
これが「漏えい電流(接触電流)」として扱われます。
ただし、安全規格に適合した電源では、
- 定格電圧250Vでも漏えい電流は3.5mA以下
となるように設計されており、多くのPC・UPS・サーバ用電源の仕様にも
「漏洩電流 3.5mA 以下」といった記載があります。
したがって、
- パソコン1台に触れただけで危険な感電を起こすレベルではない
- 規格の範囲内であれば、正常な状態として想定された電流
と考えて問題ありません。
ただし、次のような場合は要注意です。
- ビリっと強く感じる
- 焦げた臭いがする
- ケーブルや筐体に目に見える損傷がある
このような異常があるときは、すぐに使用を中止し、
メーカーや専門業者に点検を依頼してください。
2.法律・規格ではどう扱われている?(PSEとJIS)
2-1.電気用品安全法(PSE)とPC電源
一般家庭・オフィス向けのパソコン・ACアダプタ・電源ユニットなどは、
日本では電気用品安全法(PSE)の規制対象です。
- 事業者は技術基準に適合した設計・試験を行う義務がある
- 適合製品にPSEマークを表示しなければ、原則販売できない
- 情報機器向け技術基準は、JIS C 62368-1などの安全規格と整合している
つまり、市販されているPC電源は「漏えい電流も含めて」安全規格に基づき評価されている前提です。
2-2.接触電流の限度値と注意書き
旧規格(IEC 60950-1/JIS C 6950-1)や、現行のIEC 62368-1/JIS C 62368-1では、
クラスI機器(接地付き機器)の接触電流は概ね3.5mA以下とされています。
⚠️ 法令・通達は改正される場合があります。最新情報は必ず所轄官庁の公表資料をご確認ください。
※本コラムの法令・規格に関する記載は、2025年12月時点に公開されている情報を元にした一般的な解説です。
実務での適用や詳細な解釈については、必ず最新の法令・技術基準・公式ガイドをご確認のうえ、
必要に応じて専門家(電気主任技術者・電気工事士・認証機関など)にご相談ください。
2-3.参考リンク(法令・規格の一次情報)
- 経済産業省「電気用品安全法」関連情報ページ
- e-Gov 法令検索「電気用品安全法施行規則」
- JEITA(電子情報技術産業協会)トップページ
※JIS C 62368-1と技術基準の整合に関する資料はこちらから検索 - JISC(日本産業標準調査会)JIS検索ページ
※JIS C 62368-1/JIS C 6950-1の規格情報はこちらから検索
3.発電機+パソコンで注意したいポイント(概要だけ)
発電機でPC・UPS・ネットワーク機器などを多数使う現場では、
「微小な漏えい電流」が積み重なって、漏電遮断器が動作しやすくなる点に注意が必要です。
- 各機器は正常時でも、Yコンデンサなどにより数百µA〜数mA程度の漏えい電流を持っている
- 台数が増えると、その漏えい電流が合計される(=総漏えい電流)
- 発電機のメイン漏電遮断器(例:30mA)は、この総漏えい電流を監視して動作する
このため、情報機器を多数接続する現場では、
- 「消費電力(kVA)」だけでなく総漏えい電流の大きさも意識する
- PC・UPSの台数を回路ごとに分散させるなど、一つの発電機・一つのELBに集中させすぎない
といった配慮が大切です。
実際に「朝の立ち上げで発電機の漏電ブレーカ(30mA)が落ちた」トラブル事例と、
そのときの総漏えい電流の概算(PC・UPS・モニタの台数と代表値を用いた計算)については、
前回のトラブル事例コラム
「PC・UPS・ネットワーク機器を多数つないだら、発電機の漏電ブレーカ(30mA)が落ちた!?」
で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
なお、
- 漏電遮断器を外す
- 接地を勝手に変更する
- アースピンを折る・アース線を外すなど、保護接地を浮かせる
といった行為は、電気設備技術基準や関連法令に反するおそれがあり、
感電・火災など重大事故につながる危険な行為です。
必ず、有資格者が法令に従って設計・施工する前提で検討してください。
4.現場向け かんたんチェックリスト
- パソコンは「微小な漏えい電流」があるのが普通
─ Yコンデンサなどのノイズ対策部品によるもので、規格の範囲内なら故障ではありません。 - 「漏電」と「漏えい電流」を頭の中で分けておく
─ 絶縁破壊や配線ミスなどによる異常電流は、「漏電事故」として扱う別の事象です。 - 多数台接続では漏えい電流が加算される
─ 発電機+仮設盤でPC・UPSを大量に使う場合は、回路分けと漏電遮断器の選定に注意しましょう。 - 法令・規格の前提を押さえる
─ 日本では電気用品安全法(PSE)と、それと整合したJIS C 62368-1 等により、
接触電流の上限が定められています。 - 接地・保護装置は有資格者と相談
─ 発電機の中性点処理・漏電遮断器の設定・接地工事は、
電気工事士など有資格者による設計・施工が原則です。
発電機.jpでは、パソコン・サーバ・ネットワーク機器など情報機器を多数接続する現場向けに、
発電機容量の検討や、ケーブル・分電盤構成のご相談も承っています。
「この台数でも大丈夫かな?」「ブレーカが落ちないか心配」など、気になる点があれば、ぜひ一度ご相談ください。
※本コラムは一般的な技術解説であり、特定の設備に対する法的な適合保証や設計検証を行うものではありません。
実際の設計・施工・保守は、必ず関係法令・規格を確認のうえ、有資格者・専門家の責任で行ってください。
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