2025.05.22

スター・デルタ(Y-△)始動とソフトスタート徹底比較 教えて発電くん!

最終更新日:2025.12.01
  • 教えて発電くん
  • 知識
スター・デルタ(Y-△)始動とソフトスタート徹底比較 教えて発電くん!

(本記事の法令・数値は 2025年9月11日 時点の公表資料を確認済みです。主要根拠は本文末の「参考・根拠リンク」に掲載)

教えて発電くん!スター・デルタ(Y-△)始動とソフトスタート徹底比較

教えて発電くん!~Y-△始動とソフトスタートの違いって?~

発電くん|スター・デルタ始動とソフトスタート解説 こんにちは!発電くんです!モーターを動かす時、「突入電流」や「力率低下」という言葉をよく聞きますよね。実は、モーターの始動方法をどう選ぶかによって、発電機の動き方や必要容量が大きく変わります。

まずは結論から。
・コストを抑えたい → スター・デルタ(Y-△)始動が有利
・発電機や機械をいたわりたい/トラブルを減らしたい → ソフトスタータが有利
・特に発電機と組み合わせる場合はソフトスタータの方が安心な場面が多いです。

この記事では、現場でよく出てくる「30kW/200Vモータ」の例も使いながら、Y-△始動とソフトスタータの違いを、できるだけシンプルに整理していきます。

▶可搬型発電機と突入電流の基礎もあわせてチェック

 

負荷の種類(誘導性 vs 抵抗性)

まずは「モーターはどんな種類の負荷なのか?」から押さえておきましょう。モーターは誘導性負荷(インダクティブ負荷)の代表例です。

誘導性負荷(モーターを含む)

コイルや電磁力を使う負荷です。モーター、電磁弁、トランス、電磁クラッチなどが該当します。始動の瞬間に大きな電流(突入電流)が流れやすく、力率も低くなりがちです。

抵抗性負荷

ヒータ、白熱灯など、主に「熱」や「光」を出す負荷です。始動電流の立ち上がりは比較的穏やかで、力率もおおむね1.0に近いイメージです。

比較表でざっくり整理

項目 誘導性負荷(モーター含む) 抵抗性負荷
動作 回転・電磁力などの動作 発熱・発光など
始動電流 中〜非常に大(突入電流が出やすい) 小〜中(比較的なだらか)
ポンプ、ファン、圧縮機、電磁弁、トランス ヒータ、白熱灯

この章でのポイントはひとつだけです。「モーター=突入電流が大きいグループ」ということを覚えておけばOKです。

スター・デルタ(Y-△)始動のポイント!

スター・デルタ始動は、構成がシンプルで導入コストも比較的安いのがメリットです。始動の間はY結線で電圧を抑え、ある程度回転が上がってからΔ結線に切り替える方式です。

ただし、発電機と組み合わせる場合は「切替の瞬間」に注意が必要です。

【電流ショックって?】
Y結線からΔ結線へ切り替わる瞬間だけ、一時的にとても大きな電流(過渡電流)が流れることがあります。
切替方法(オープン/クローズド)、時間設定、ポンプなどの負荷状態によっては、定常の始動電流の約2倍に達するケースもあります。
この「電流ショック」が大きすぎると、発電機の保護リレーが動作したり、ブレーカがトリップして停止してしまう原因になります。
対策としては、切替タイミングの適正な調整や、クローズドトランジション(瞬断をできるだけ小さくする方式)の採用などが有効です。
(参考:富士電機「電動機の始動方法」

  • ◎ 機器構成がシンプルで低コスト
  • △ Δ結線に切り替える瞬間に電流ショックが出る

ソフトスタータ(ソフトスタート機能)って何がすごいの?

ソフトスタータは、パワーエレクトロニクス(サイリスタ等)を使って電圧をゆっくり上げていく始動器です。
モーター側から見ても、発電機側から見ても、「じわ〜っと動き出す」イメージで、負担が小さくなるのが特徴です。

また、起動完了後は内蔵または外付けのバイパスコンタクタでサイリスタを短絡する機種が多く、定常運転中の高調波も抑えやすい構成になっています。

  • ◎ なめらかな始動で、モーター・機械・発電機にやさしい
  • ◎ 始動電流を設定でコントロールしやすい
  • △ 機器価格はY-△より高め、放熱スペースも考慮が必要

Y-△始動 vs. ソフトスタータ - 電流・トルク徹底比較

※ 用語:DOL=直入始動(Direct On Line)

比較軸 Y-△ 始動 ソフトスタータ
始動電流(定格比) 約 2.0〜2.6 × FLA 設定範囲 1.5〜6(〜7)× FLA
※設定値・機種による。例:2.0×に設定すれば、Y-△より小さい電流で始動できることが多い。
始動トルク(DOL比) 約 25〜33 % 電流設定とほぼ相関(原理は「電圧の2乗」に依存)
例:3×設定 ⇒ 50〜60 % 程度
始動時間 3〜10 s(Δ投入の瞬間に電流ピーク) 5〜15 s(滑らかに加速)
力率(始動時) 0.1〜0.2 程度 Y-△と同等〜やや良い
高調波 ほとんど発生しない 起動中は高めだが、
フィルタ/リアクトル+バイパスで低減可能
装置コスト ソフトスタータの 1/2〜1/3 程度 Y-△より高価
適合発電機容量
(30 kWモータ例)
170 kVA クラス 150 kVA クラス※
(始動電流 2.0×設定時の目安)

※ 上記の「2.0〜2.6×FLA」は定常始動時の最大値イメージで、Y-△ではΔ切替の瞬間に条件次第でさらに大きな過渡ピークが重なる場合があります。

※ ソフトスタータの電流上限を 3.0× に設定すると必要kVAは増え、200 kVAクラスの発電機が必要になるケースもあります(発電機と同時に動かす他負荷が多いほど、大きめの容量が必要になります)。

30 kW(≒40 HP)/200 V モータで発電機容量を計算してみよう!

ここでは、よくある「30kW/200Vの三相モータ」を例に、必要な発電機容量を実際に計算してみます。

条件は次の通りです。

  • 電動機定格出力:30 kW
  • 効率 η:90 %
  • 力率 PF:0.8
  • 定格電流 FLA ≒ 120 A
  • 電源:三相(3φ)/線間電圧 VL-L = 200 V

1. 始動電流の設定

まずは、始動方式ごとに「FLA(定格電流)の何倍流れるか」を決めます。

始動方式 設定倍率 計算電流 IS
Y-△ 2.5 × FLA 300 A
ソフトスタータ 2.0 × FLA 240 A

2. 必要見掛け電力 S[kVA]

次に、「発電機としてどれだけのkVAが必要か」を計算します。

式:S = 安全係数(1.6) × √3 × VL-L × IS / 1000(VL-L = 200 V)

※ 安全係数1.6は、「他の負荷」や「余裕」を見込むための目安としてここでは採用しています。

始動方式 S[kVA] 推奨発電機クラス
Y-△ ≈ 166 kVA 170 kVA クラス
ソフトスタータ ≈ 133 kVA 150 kVA クラス

ソフトスタータの電流上限を 3.0× にすると、必要 kVA は約 200 kVA となり、推奨発電機クラスも 200 kVA クラスへアップします。

発電くんの現場レポート!~実際の現場の声~

👷工事現場でのある日の会話

若手くん:
「発電くん、ポンプの始動にはスター・デルタが安くて良いですよね?」

発電くん:
「コストだけならね。でも発電機と一緒に使うなら注意だよ。切替時の電流ショックで、発電機が止まることもあるんだ。」

若手くん:
「それは困りますね…! 現場が全部止まっちゃいます。」

発電くん:
「そんな時はソフトスタータが安心! ゆっくり電圧が上がるから、発電機にも機械にも優しいよ。
しかも、始動電流の上限を設定できるから、発電機の選定もしやすくなるんだ。」

モーター始動方式別・発電くんの選定アドバイス!

最後に、「どんな現場ならどちらを選びやすいか」を表でまとめます。

条件 Y-△始動 ソフトスタータ
コスト優先 ◎(安価) △(高め)
滑らかな始動 ◎(モーター・機械にやさしい)
始動電流制御 中(ある程度まで) 高(設定で細かく調整)
発電機併用 要注意(Δ切替時の電流ショック) ◎ 比較的安定して運転しやすい

法令・安全面のチェックポイント

非常用発電機として恒久設置する場合などは、電圧の品質消防法上の手続きも意識しておく必要があります(工事用の仮設発電機とは扱いが異なる場面です)。

  • 電気事業法施行規則 第38条(電圧・周波数)
    ざっくり言うと、受電点において標準電圧100Vは101Vの±6V(≒約95〜107V)、標準電圧200Vは202Vの±20V(≒約182〜222V)が「維持すべき電圧」の目安とされています。
    発電機と負荷を組み合わせる際も、Y-△切替の瞬間の電圧降下・上昇がこの範囲から大きく外れないかを確認することが大切です。
    参考:e-Gov法令検索|電気事業法施行規則電気事業法(第26条)
  • 消防法 第17条の3の2(設置届)
    非常用発電機を「消防用設備等の非常電源」として設置する場合は、所轄消防への届出が必要です。
    提出期限の運用は自治体ごとに異なります(東京都の例:設置後4日以内など)。計画段階で必ず所轄消防に確認しましょう。
    参考:東京消防庁|消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書
  • 消防法 第17条の3の3(点検・報告)
    非常用発電機を含む消防用設備等については、点検の実施点検結果の報告が義務付けられています。目安は次の通りです。
    ・機器点検:6か月ごと
    ・総合点検:年1回
    ・点検結果の報告:特定防火対象物=年1回/非特定=3年に1回(具体的な様式や細部の運用は自治体ごとに異なります)。
    参考:東京消防庁|消防用設備等点検報告制度(Q&A)

⚠️ 法令・通達は改正される場合があります。最新情報は必ず所轄官庁の公表資料をご確認ください。

参考・根拠リンク

  1. e-Gov法令検索:電気事業法施行規則 第38条電気事業法(第26条)
  2. 経済産業省(資料):電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン(受電点の電圧維持 101±6V/202±20V)
  3. 東京消防庁:消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書(届出先・様式)
  4. 東京消防庁:消防用設備等点検報告制度(Q&A)(点検周期/報告周期)
  5. 富士電機:電動機の始動方法(Y-△の一般論、切替時の過渡、ソフトスタータの原理)
  6. 富士電機:電磁開閉器総合カタログ:自動スターデルタ始動器(方式・構成例)
  7. 安川コントロール:ソリッドステートスタータ SMCシリーズ ユーザーズマニュアル(電流制限 50〜500%Ie の設定例)
  8. (参考・日本語資料)富士電機(シュナイダー取扱):ソフトスタータ ATS48□□□Y 取扱説明書(電流リミット設定レンジ・要ログイン)

おわりに~発電くんからのメッセージ~

Y-△始動とソフトスタータの違いが分かると、「どの始動方式なら、どの発電機容量が安心か」もイメージしやすくなります。
現場の用途や予算に合わせて、ムリのない計画を立てていきましょう。

「自分の現場だと、どの方式が良い?」「このモーターに合う発電機容量は?」など、具体的なご相談も大歓迎です。
発電機選定や負荷計算、ケーブル選定は、国内トップクラスの保有台数を誇る『発電機.jp』にいつでもご相談ください!

\便利なツールはこちら/


\ 発電機.jpからのおしらせ/
発電機レンタル・購入は 発電機.jp におまかせ!

国内トップクラス 2,800台超 の保有から、
現場にピッタリの機種をスピード手配します。

便利な無料ツールもご用意しています。お気軽にご利用ください!

📩 発電機.jp WEBからのご相談・お見積りはこちら

「どの発電機を選べばよいか分からない」「ケーブルも一緒に手配したい」など、専任スタッフが用途にあわせてご提案いたします。

※お急ぎの場合も、まずはフォームからご連絡ください。担当者より折り返しご案内いたします。