教えて発電くん!発電機の並列運転(パラレル運転)ってなに?
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⚠️ 法令・通達は改正される場合があります。最新情報は必ず所轄官庁の公表資料をご確認ください。
※本コラムの内容・法令情報は 2025年9月29日(JST)時点で確認したものです。最新の詳細は、必ず各メーカー資料や経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」など一次情報をご確認ください。
教えて発電くん!発電機の並列運転(パラレル運転)ってなに?
発電くん:「大きな現場で、発電機を2台・3台と並べて使っているのを見たことない? あれが並列運転(パラレル運転)だよ!」
発電機の並列運転は、ざっくり言うと「トラックを何台か並べて荷物を運ぶ」イメージです。
- 1台では足りない電力を、複数台で分担してまかなう
- 1台止まっても、残りの発電機でバックアップできる
- 時間帯や負荷に合わせて、動かす台数を増減できる(省エネにも◎)
とても便利な運転方法ですが、ただ並べてケーブルをつなぐだけでは絶対にダメです。
周波数・電圧・位相などの条件をきちんと揃えないと、発電機どうしで電気が押し合い・引き合いをして事故の原因になってしまいます。
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発電機A
(同期対応・AVR付) |
発電機B
(同期対応・AVR付) |
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| ↓ 各発電機用遮断器(GCB) ↓ 横流補償用CT(Droop CT) |
通信ケーブル・
制御信号線 |
↓ 各発電機用遮断器(GCB) ↓ 横流補償用CT(Droop CT) |
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並列運転制御盤(パラレルコントローラ)
(同期チェック・逆電力継電器等を内蔵) |
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| ↓
負荷側(分電盤・設備・現場機器など)
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並列運転とは?
発電機の並列運転(パラレル運転)とは、複数の発電機を同期(タイミングを揃えて)させて同時に運転し、合計出力を大きくする運転方式です。
単独の発電機ではまかないきれない大容量負荷にも対応できるほか、以下のようなメリットがあります。
並列運転の主なメリット(イメージ)
- 大容量負荷に対応:150 kVA + 150 kVA = 300 kVA のように、発電容量を足し算できる
- 冗長性の確保:1台が故障しても、残りの発電機で電力供給を継続しやすい
- 柔軟な運用:昼間は1台運転、夕方のピークは2台運転など、必要な時だけ台数を増やせる
- メンテナンス性:点検するときは1台だけ止めて、もう1台で電源を維持することも可能
並列運転に必要な条件(目安)
発電機どうしを安全に並列運転するには、次の条件をほぼ揃えた状態で接続する必要があります。
- 周波数差:±0.2 Hz 程度以内
┗ ほぼ同じ回転数で回っている状態(例:60 Hz 同士) - 電圧差:定格の ±2 % 程度以内
┗ 電圧の「高さ」がほぼ同じこと(例:AC 400 V 同士) - 位相角:±10° 程度以内、相順(R-S-T)が一致
┗ 三相の波形の「山と谷の位置」が揃っていること
※上記はあくまで一般的な目安です。実際の許容範囲は機種・メーカーの基準に従ってください。
例として、デンヨー技術資料では「電圧・周波数・位相が一致」していること等が条件として示されています。参考リンク(PDF)
並列運転に必要な設備
並列運転を行うには、「並べてコンセントをつなぐ」以上の専用設備が必要です。主な構成要素をやさしく整理すると、下記のようになります。
- 並列運転対応型の発電機(同期可能な仕様)
┗ カタログや銘板に「並列運転可」「パラレル」などの記載があるもの - 並列運転制御盤(パラレルコントローラ)
┗ 発電機どうしを同期させ、有効電力の分担・保護を行う「頭脳」の役割
┗ 中に同期チェックリレー・逆電力継電器などの保護リレーが入っていることが多い - 通信ケーブル・制御信号線
┗ 発電機どうし、または発電機と制御盤のあいだで運転状態や負荷情報をやり取りする線
例:CAN 通信、同期信号、負荷分担線など - 無効電力分担用 横流補償用CT(Droop CT)(AVRへ入力)
┗ 発電機の無効電力(励磁側の負担)が偏らないようにするための電流検出用CT - 各発電機のAVR(自動電圧調整器)
┗ 発電機の電圧を一定に保つための装置。Droop CTからの信号を受けて、電圧を少し落としたり上げたりしてバランスをとる - 各発電機用遮断器(GCB)
┗ 発電機ごとに設ける主遮断器。逆電力継電器などからのトリップ信号で誤動作時に遮断
用語解説:横流補償用CTと並列運転制御盤の違い
- 横流補償用CT(Droop CT):
各発電機の出力電流(特に無効電流成分)を検出し、その情報をAVRに送ります。
これにより、並列運転時に「どの発電機がどれくらい励磁を負担するか」を調整し、無効電力の分担を安定させます(これをドロップ特性と呼ぶこともあります)。 - 並列運転制御盤(パラレルコントローラ):
複数の発電機を同期させ、全体の運転・保護・有効電力分担をまとめて管理する装置です。
・どのタイミングで並列投入するか(同期チェック)
・どの発電機をどの順番で起動・停止させるか
・逆電力・過電流など異常時の遮断
…といった役割を担います。 - つまり、Droop CTは「無効電力分担のためのセンサー+補償入力」、
制御盤は「複数発電機全体の頭脳(司令塔)」と考えるとイメージしやすいです。
参考:デンヨー技術資料(横流補償・並列運転)
注意点とよくあるトラブル例
並列運転はとても便利ですが、条件を間違えると大きなトラブルにつながることもあります。代表的な注意点を「なにが起こるか・原因・対策」という流れで整理します。
- 同期不良による逆流事故
【何が起こる?】
・条件が合わないまま並列投入すると、発電機から負荷へではなく、発電機どうしに電力が流れ込む(逆電力)ことがあります。
・ひどい場合、発電機がモータのように回されてしまい(モータリング)、遮断器トリップ・機器損傷の原因になります。
【原因】
・周波数・電圧・位相が揃っていない状態での並列投入
【対策】
・同期チェックリレーや並列運転制御盤の同期機能で条件を確認してから投入すること - 循環電流(横流)の発生
【何が起こる?】
・負荷が少ないのに、発電機の巻線が熱くなったり、不必要な過電流が流れたりします。
【原因】
・各発電機の励磁状態・電圧が揃っておらず、無効電流が発電機どうしの間で行ったり来たりしてしまうため。
【対策】
・Droop CTによる横流補償が適切に働くよう、AVRの設定・配線を正しく行う
・並列運転対応が確認できている機種同士で組み合わせる - 単相負荷の偏り(三相不平衡)
【何が起こる?】
・三相のうち1相だけに単相負荷が集中すると、ロータ加熱・過電流の原因になります。
【対策】
・単相回路を引き出す場合は、各相にバランスよく負荷を分ける(分電盤側の設計も重要) - 異メーカー混在による不具合
【何が起こる?】
・制御方式やDroop特性が合わず、負荷分担がうまくいかない/誤動作する可能性があります。
【対策】
・基本的には同一メーカーの並列運転対応機種どうしで組み合わせる
・どうしても混在させる場合は、メーカー・専門業者に事前検証を依頼する - 溶接機など突入電流の大きい機器の使用
【何が起こる?】
・アーク溶接機やモータ負荷の同時起動などで、一時的に大きな電流が流れ、電圧降下や保護装置動作の原因になります。
【対策】
・溶接機を発電機で使う場合は、発電機の容量・台数・分担方法を慎重に確認する
・必要であれば、負荷計算ツール等で事前にシミュレーションする
※並列運転を実際に行う前には、必ず専門業者と相談し、事前の試験・シミュレーションで安全を確認しましょう。
メーカー別:並列運転対応状況(2025年時点の一般的な傾向)
「どのメーカーなら並列運転しやすいの?」という問いに対して、2025年時点での一般的な傾向をまとめたものです。実際の可否・条件は、必ず最新のカタログ・技術資料・メーカー回答でご確認ください。
◎:広く対応 / ○:一部対応(条件・オプションあり) / △:限定的 / ×:非対応(要代替検討)
| メーカー名 | 並列運転対応 | 備考 |
|---|---|---|
| デンヨー(Denyo) | ◎ | DCAシリーズなど。手動・自動並列、横流補償の技術資料が充実。資料 |
| 北越工業(AIRMAN) | ○〜◎ | 機種により手動/自動並列に対応(カタログ記載)。資料 |
| ヤンマー(Yanmar) | ○ | 非常用発電装置で自動並列運転システムの案内あり。資料 |
| 新ダイワ(やまびこ) | ○ | 小型インバータ発電機の一部で並列端子・並列キット対応。資料 |
| 三菱重工(MHI) | ◎ | 大型発電機に強く、常用・非常用とも並列システム構築実績多数(個別仕様確認が必要)。 |
| ホンダ(Honda) | △ | 小型インバータの同型式同士で並列運転が可能(純正並列キット)。資料 |
| ISUZU(いすゞ) | △ | 主にエンジン供給メーカー。完成発電機の並列可否はOEM先・機種ごとの確認が必要。 |
| その他(海外製) | △〜× | 制御方式や規格が日本製と異なる場合が多く、日本製との混在並列は不可となるケースが一般的。個別確認推奨。 |
現場レポート:某建設現場での活用例
現場の声:
「300 kVA の負荷に対して、150 kVA 発電機を 2 台並列で使用しました。
昼間の低負荷時は 1 台のみ、夕方のピークタイムには 2 台運転と、時間帯で台数を切り替えたところ、燃料使用量を約 20 % 削減できました!(当社実測の一例)」
- 昼間(低負荷)・・・150 kVA × 1台
- 夕方(ピーク)・・・150 kVA × 2台(並列運転)
このように、負荷の変動に合わせて発電機の台数を柔軟に変えられるのが、並列運転の大きなメリットです。
発電くんのアドバイス!並列運転チェックポイント
発電くん:
「並列運転はとっても便利だけど、“対応している発電機”と“正しい制御”がないと危ないんだ。最低限、次の3つはチェックしておこう!」
- 並列運転対応の機種か?
┗ カタログ・銘板で「並列運転可」「パラレル対応」といった記載を確認 - 制御盤・Droop CTなど必要な機器はそろっているか?
┗ 並列運転制御盤、横流補償用CT、AVR、同期チェックリレー、逆電力継電器など - メーカーや専門業者と条件を詰めているか?
┗ 異メーカー混在や溶接機などの大きな負荷がある場合は、必ず事前に相談
発電くん:「わからない点があれば、早めに専門業者に相談してね。
発電機選定のときに『並列運転する予定があるかどうか』を伝えておくと、あとで困りにくくなるよ!」
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並列運転時の必要容量の目安確認や、ケーブルサイズの検討にもぜひご活用ください。
並列運転をもっと簡単に行う方法や、最新の制御方式について詳しく知りたい方は、以下のコラムもあわせてご覧ください。
▶ Easygenってなに?デンヨー発電機との関係とメリットを解説!
参考リンク(一次情報)
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」(最新版の改正履歴を含む): PDF
- デンヨー技術資料「エンジン発電機の並列運転」: PDF
- Honda「並列運転用関連商品」: 公式ページ
- やまびこ(新ダイワ)「IEG1000-M(2台並列可)」: 公式ページ
- ヤンマー「非常用発電システム(自動並列運転)」: 公式ページ
- Woodward「easYgen-3000XT(多台数並列・負荷分担)」: 製品ページ
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